鳩時計の歴史と現状


世界的に知られている鳩時計の歴史は、1640年ごろ、南にスイス、東にオーストリア、西にフランスと接しているドイツの黒い森というところで始まりました。その当時、長く、厳しい冬の間でも、有益で、理想的な時間の使い方/仕事を考え、黒い森でこの新しい地場産業ができあがりました。当初は、木と鋼線から作った簡単な時間を計る道具として、少ない量で実験的に作られました。そして、徐々に、新しい有益な産業へ変貌していきました。地理的に、経済的に隔離された農民を世界的に有名にした黒い森の時計の誕生です。今では、世界的に、黒い森と言えば、鳩時計といわれるようになりました。
その歴史は、1738年ごろ、フランツ・アントン・ケトラー氏によって今の鳩時計のスタイルが確立されましたといわれています。黒い森のションワルド出身のケトラーは、教会のパイプオルガンの原理を利用したカッコーの時報が、時間になると、自動的に鳴る仕組の時計を生産しました。鳥の声を模倣した技術を時計に組み入れる技術は、中世ヨーロッパの貴族のための時計からのものです。フランスのストラスブルグ大聖堂に聳え立つ雄鶏が、鳩時計発想の原点のようです。そのような雄鶏の"さえずり"を、スイス/ベルンの大聖堂や、チェコのプラハの天文時計でもみることができます。時計のような小さな箱の中で、雄鶏の鳴き声を模倣することは難しいことでした。その中でも、カッコーの鳴き声が一番模倣しやすかったのです。それ以来、木製のムーブメントが、金属製に徐々に変わり、主流であった12時間ムーブメントに24時間、8日仕様ムーブメントが加わり、針が象牙から、セルロイド、プラスティック、木へと変わりました。 原材料の変貌とともに、その地域の商人たちが、この時計を、ヨーロッパ中に紹介し、世界的に、知られるようになりました。
また、デザイン自体もその時代背景にあった物が施される様になりました。今では、一番のオリジナルとされているハンターモデル(ウサギ/鳥とライフル、ウサギ/鳥と鹿をモチーフにしたもの)に対しても、アメリカの動物愛護団体からのクレームにより、動物が逆さにつるされているモデル(オリジナル)と動物が立っているモデル(愛護団体対策用)があります。そんな時代背景も、この時計に見ることが出来ます。

















トリベルグにあるドイツ時計博物館には、ドイツの時計の歴史を見ることができる貴重な博物館です。そこには、何万個もの歴史のある時計が保管されており、その中には、1787年に黒い森で作られた鳩時計もあります。 200年以上も前に作られた時計ながら、今でも、魅力は、いっぱいです。 そんな鳩時計作りは今でも受け継がれています。また、シュナイダー社製の鳩時計もこの博物館のコレクションの一つになっています。















当社では、シュヴァルッヴァルト時計協会が認定している鳩時計だけを取り扱っています。シュヴァルッヴァルト時計協会では、規定している品質基準を満たした純然たる機械式ムーブメントにより動く黒い森製鳩時計にのみ、この証明書を発行しています。














現在、鳩時計は、本国ドイツの他、スイス、日本、韓国、中国で作られています。(2007年春現在の当店の知る限りの情報として)

ドイツ本国では、発祥の地、黒い森(スイス、フランスとの国境付近)で1640年ころから作られるようになりました。年間、約30万個ほど作られた鳩時計(正確な数字ではありませんが、1999年の最盛期のおおまかな数字)ですが、現在では、総生産20〜24万個程と思われます。手作りの鳩時計業界ですが、やはり、時代の流れ、吸収合併が激しい業界となっています。世界的には、鳩時計発祥の地黒い森で作られる昔ながらの錘で動かす鳩時計が主流で、全体の9割以上を占めているようです。本物のドイツ製鳩時計に使われるムーブメントは、2種類あり、最も信頼されているレギュラと唯一自社ブランドで製造するH社です。H社以外は、レギュラムーブメントを使っているようで、H社の機械は、レギュラに比べ、耐久性に乏しく、故障しやすいという評価のためのようです。そのため、H社の取り扱い先は修理に強い販売店である傾向が強いように思われ、販売方法も通常の店頭小売以外の、ゲリラ的な販売がよくあるようです。そのゲリラ的な販売方法がアメリカで失敗したため、その残骸が日本で格安に売られていた時期もあったようです。また、それぞれの部品メーカー(例えば、錘、フイゴ、ゴングなど)にとっては、生産数が限られており、また、競争相手がいないため、各部品メーカーは、モノポリー状態となっています。そのため、毎年お決まりごとのように価格が跳ね上がっています。オルゴールも同様、メーカーが数少なく、鳩時計用オルゴールを生産できるのは、4社だけで、クオリティと価格/生産能力の面からスイス製がモノポリー状態となっています。品質を追求している鳩時計メーカーは、数少ないオルゴールメーカーの中でも現在最高級のオルゴールを作り続けているスイス製のものを使っています。近年、コピー品/類似品が横行する中、黒い森の各メーカーでは、消費者が本物の鳩時計とコピー品/類似品と区別できるように、時計協会を立ち上げ、シュヴァルツヴァルト原産の本物の鳩時計には、認定証を発行し始めました。しかしながら、時計協会の認定しない電池時計を、あたかも本物であるかのように販売する悪質な販売業がいるのも現状です。


スイスにも、鳩時計を作るメーカーが1社あり、スイス観光のお土産のひとつとして、日本人観光客には知られているようです。スイスシャレーのかわいいタイプの鳩時計を作っています。時計の機械はドイツ製を使用し、本体は、スイス/チューリッヒ近郊で作られているようです。以前は、スイス=時計のイメージとスイス観光により、良い状態だったようですが、最近では、スイス国内でのドイツ製鳩時計の販売の増加とスイス観光客の減少などにより、低迷しているようです。とりわけ、我々、日本人には、鳩時計=スイスのイメージが強いようです。


世界的には、全く知られていませんが、日本は、昭和40年代の初めまで機械式の鳩時計を作っていた鳩時計を愛用する主要国だったのです。高度成長期という時代の流れによる利便性と生産過多により、生産が終わってしまったようですが、日本では、2-3社で鳩時計が作られていたようで、1社がドイツ製のムーブメントをコピーしたもの、もう1社は、試行錯誤してオリジナリティあるムーブメントに仕上げようとしていたようです。現在でも、電池式の鳩時計を製造しています。しかしながら、日本の時計メーカーらしい点は、業界を先導して薄利多売を行いながら、また、企業の効率を追求しながらも(電池式に特化し)、鳩時計の命である“趣”が必要である点をきちんと考慮しているため、昔ながらのふいご/笛の音による時報を奏で続けているモデルも残しています。私が思うところは、コピー品に終わるのではなく、企業として、効率を追求しながらも、心に残る鳩時計を模索している近代の鳩時計を作っているように思います。

また、お隣、韓国でも掛け時計といえば、鳩時計といわれるくらい鳩時計好きな国民のようです。”鳩時計”という名前のものが好きで、その伝統や趣ではなく、価格面で優れたの電子音の鳩時計が一般的のようです。この点、日本に非常に似て、非なるものかと思われます。

そして、大国中国でも、鳩時計が製造されており、ゼンマイ式の機械式鳩時計や電池式鳩時計が作られています。中国製=安価というイメージですが、あるメーカーは、完全手彫り(但し、コピーのため、デザインが乏しく、粗悪なつくりらしい)のため、高額な鳩時計のようです。また、現在のところ、販売方法が、アメリカの露店でのゲリラ販売が主流のようです(あるアメリカの鳩時計販売店のお話)。現在は粗悪な作りながら、完全手彫りに徹し、ゼンマイを動力とする機械式に徹し、またコピーするモデルも昔作られていた手の込んだからくりモデルも作るなど、昔ながらの鳩時計作りから始めている点からすると、将来は、強いメーカーとなるかもしれません。また、もう一社は、大国らしい生産方法のようです。いずれ、間違いなく、ドイツメーカーの名前で(もしかしたら、中国のメーカーとして)、中国製の鳩時計が、世界の安価な価格帯のマーケットを飲み込むと思います。そして、高額な鳩時計だけが、本当の意味での、ドイツ製として、生き残ることと思います。すでに、その動きは出始めています。例えば、ドイツ製として販売されている電池の鳩時計の時計部分は全て中国製だからです。

                                          

          

ヴァルト
住所     神戸市中央区下山手通3-6-2
TEL/FAX  078-333-1888
営業時間   11:00AM〜19:30PM(水曜定休日)